- 「運動不足の患者さんに対して行動を促すために、何かいい方法ないかな〜?」
- 「運動療法ってホントに効果あるの?」
- 「患者(A)さん、あと4kgの減量が必要だと医師より指示があった。患者さん自ら進んで減量に取り組むためのアプローチの仕方で悩んでいる。」
といったお悩みをもつ看護師、そして運動療法の種類や効果に興味のある潜在看護師さんに向けて解説した記事となっております。
看護師による運動に対する行動変容を促すアプローチの1つ、多理論統合モデル(TTM)を用いた看護をお伝えします。
ですが、「とりあえず多理論統合モデルというテクニックを覚えてしまえばOK」というわけではありません。
もしかするとあなたも、患者さんとの信頼関係を構築するより先に、とりあえず患者さんの行動変容を促すアプローチのテクニックだけを身につけたいと思っていませんか?
実は僕がそうだったんですよね・・・(苦笑)。
僕やあなたが実践した看護は患者さんに伝わらないどころか、今よりも健康行動・身体活動に対する情熱が薄れてしまうかもしれません。
多理論統合モデル。これは運動療法に関する標準化されたアプローチの仕方です。
この標準化さたアプローチ法に看護師としてのあなたの情熱を注ぎこむことで、患者自身の行動変容へとつながるんだってことを忘れないでくださいね。
この記事では行動変容を促すアプローチ法として、多理論統合モデル(TTM)を用いた看護を紹介いたします。
看護師としてのあなたの情熱についてはこの記事では詳しく述べません。
ですがテクニック論だけに走らず、あなたと患者さんの信頼関係が何より大切だってことを忘れないでくださいね。
この記事は、
- 運動療法の種類や効果について考えている現役看護師
- 看護師に復職するまでの間に運動療法と看護について学んでおきたい潜在看護師さん
に役に立つ記事です。
大切と思う箇所は勉強用メモとして残しておくか、この記事をシェアやブックマークしておいていつでもチェックできるようにしておきましょう。
行動変容を促すアプローチについて、多理論統合モデル(TTM)について、図解入りでわかりやすく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
患者さんとの信頼関係を築くために【LEARNのアプローチ】
LEARNのアプローチ
Listen(傾聴):共感をもって患者の認識を傾聴する
Explain(説明):傾聴した上で医療者の認識を説明する
Acknowledge(相違の明確化):共通点と相違点を認識し、相談する
Recommend(提案):相談した結果、看護師は経験に基づいて最善の方針を推奨する
Negotiate(交渉):実施できるように患者と交渉する
参考:「高齢者にLEARN のアプローチで治療の意思決定支援を行った腎代替療法選択期の看護」:臨床研究高松赤十字病院紀要 Vol. 5:23-27,2017
僕たち看護師は、患者さんとの信頼関係を気づけなければどんなテクニックを用いても、患者さんの心を動かし、実際の行動につなげることはできません。
患者さんが思うような行動を起こしてくれなかった場合には、患者さんではなくわれわれの看護力が足りなかったということです。
いかなる看護についても看護の責任は看護師がもちましょう。
看護の責任を受け止めることを前提に、患者さんとの信頼関係構築のためのアプローチ方法の1つである【LEARNのアプローチ法】を上記に示しました。
患者さん自身が意思決定しようとする気持ちに寄り添うこと
治療・看護や今までの日常生活にどんな変化が訪れるのかを具体的に情報提供すること
患者さん自身がじゅうぶん理解して意思決定できるよう丁寧に説明すること
ということが、どんな看護をするにせよ大切なことだと考えています。
看護師として「患者さんに寄り添うこと」「具体的な情報提供・共有」「エビデンスに裏づけされた丁寧な説明」などが伴っていなければ、ほんとうの意味で「患者さんの行動を変えること」はできないんじゃないかなと考えています(自戒の意味を込めて)。
では各論的な内容に入っていきましょう!
行動変容を促すアプローチ方法【多理論統合モデル】

行動変容ステージモデルでは、人が行動を変える場合は「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通ると考えます。行動変容のステージをひとつでも先に進むには、その人が今どのステージにいるかを把握し、それぞれのステージに合わせた働きかけが必要になります。
あなたの受け持ち患者さんのなかには、運動が好きな患者さんもいればそうでない患者さんもいるでしょう。
運動は好きだけど苦手な人、運動に消極的な人、そして運動療法の効果に疑問をもっている人もいることでしょう。
運動療法の必要性がある患者さんに対して看護師や医療従事者は、「運動と言われても何から始めればいいんだろう?」といった患者さんの悩みを解消し、運動不足解消にむけた看護を指導・実践する必要がありますよね。
多理論統合モデルとは
人が行動を変える場合、「無関心期」→「関心期」→「準備期」→「実行期」→「維持期」の5つのステージを通るという考えに基づいた理論です。
では、1つひとつのステージを紐解いていきましょう!
運動不足解消のために始めること【第1ステージ:無関心から関心へ】

生活習慣を見直してみよう
- 軽く汗をかく程度の運動を1日30分以上、週2回以上行っていない
- 1日の歩行時間は多くても1時間未満だ
- 日常生活の中で積極的に身体を動かすような工夫を取り入れていない
- 同世代の同性と比べて歩くのが遅いほうだ
- 階段とエレベーターなら迷わずエレベーターを使用する
- 1日のなかで家から一歩も外に出ない日がある
- 歩いて10分くらいの距離でも歩かない
- 運動(スポーツ)に興味はない
現状把握に努めよう
- まずはあなた自身の現状把握に努めましょう。
- 次に、行動を起こす方法や合併症の可能性について考えてみましょう。
- さらに、運動することで得られるメリットについても深掘りしてみましょう。
- そして、運動への興味へとつなげましょう。
運動不足解消のために始めること【第2ステージ:関心から準備へ】

日常生活の振り返り
- 歩いて5〜10分の距離でも、自動車やバイク、自転車などで移動する
- 電車やバスなど公共交通機関を利用した際、空いてる席を探してすぐに座る
- 座って作業することが多い
- 「〇〇取って」など、自分は動かず相手に物を取ってもらうことが多い
- ついつい、座りたくなる
- 一度座ると立つのがおっくうだ
- テレビはごろ寝しながら見ている
- 休日は家でゴロゴロする派だ
- 家から一歩も外に出ない日がある
- ここ半年ほど、まともに身体を動かして汗をかいた記憶がない
- 階段があってもエスカレーターやエレベーターを利用する
- 歩いていると他人に追い越されることが多い
何個チェックがつきましたか?
◆0〜4個:日常生活のなかで積極的に身体を動かせています
◆5〜8個:身体活動が少なめです。チェック項目に注意してみましょう
◆9個以上:かなりの運動不足です。何か取り組めそうな行動を探しましょう
気持ちを整えましょう
- まずは気持ちを整えましょう。
- 次に、小さなステップから行動パターンを変えてみましょう。
- 行動パターンを変えることで身体や気持ちにどんな変化が起こるのか考えてみましょう。
- そして、運動への準備へとつなげよう。
運動不足解消のために始めること【第3ステージ:準備から実行へ】

小さなステップを考えよう
- 自宅や職場の近くに運動施設がないか調べてみる
- 自宅や職場の近くにウォーキングコースを作れないか考えてみる
- 運動に関するイベントがないか調べてみる
- テレビや新聞のスポーツニュースを読んでみる
- 書店で運動に関する本や雑誌を手にとる
- スポーツ用品店に立ち寄ってみる
- ウォーキングシューズの種類やサイズを見にいく
- 歩数計にどんなものがあるのか見てみる
- バス停あるいは駅の1区間を歩いて時間を計ってがみる
- 駅やデパート、職場や自宅マンションの階段が何段あるのか数えてみる
- 出かけるときに車を使わないようにする
- 腹筋や腕立て伏せができるか試してみる
- 足を伸ばして前屈、どこまでては届きますか?
- 月1回程度、何か運動をしてみる
具体策を作ってみよう
- あなたの日常生活の中で動けるのはいつでしょうか?
- 自分の足を使って積極的に動いてみましょう!
「動くことの心地よさ」を体感できればあなたの活動量もきっと増えるはず!

運動・身体活動の例
具体的な目標を立てよう

専門家の力を借りよう!
- 看護師
- 管理栄養士
- リハビリスタッフ
- 医師
- 薬剤師
- MSW(メディカルソーシャルワーカー)
- 患者会
- 健康情報サイト
などなど・・・
あなたのサポーターは?
家族や友人、学校やご近所、職場などで一緒にウォーキングしてくれる人はいませんか?
ランチや外食の時に一緒に低カロリーやヘルシーなお店に付き合ってくれる人はいませんか?
落ち込んだとき、イライラしたとき・・・感情的になって食べ過ぎてしまいそうなときに話を聞いてくれたり一緒に気分転換をしてくれそうな人はいませんか?
あなたの自己管理の弱さを叱ってくれる人はいませんか?
あなたのことを励ましたり、ほめたりしてくれる人はいませんか?
などなど・・・
がんばる宣言!
- 行動開始日を宣言する!
- 1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後の目標を立てる!
- なりたい自分を具体的に宣言しよう!
運動不足解消のために始めること【第4ステージ:実行から維持期へ】

ステップアップしよう
◆他の人がどんなことをしているのかを知ろう
- 必ず記録をつけている
- 小さな目標に分けて、達成するごとに家族にほめてもらう
- 健康行動に気をつけるようになってから、検診結果が少し改善した!
- 目標をいつでも目のつくところ(部屋。スマホの壁紙など)において、維持できるように心がけている
- 着たい洋服があったので頑張れた!
◆うれしい変化を書き出してみよう!
- 自分のがんばりを自分で認めてあげられるようになった
- 容姿も気持ちも変化している自分に気づけた
- サポートしてくれた人と喜びを共有できてうれしい!
- サポートしてくれた人への感謝の気持ちが芽生えた
- この喜びを次は他の誰かへ届けたいと思うようになった
後戻りしそうな状況は?
- イベントがある時(飲み会、同窓会、結婚式、出張)
- 休日や長期休暇の時(GW、夏休み、年末年始)
- ストレスが溜まっている時
- 疲れた時(仕事、育児、家事)
- 環境の変化があった時(転勤、引っ越し、職場内での異動、定年退職)
後戻りしそうなときの対処法
まずは自分の気持ちの変化に気づくこと
変化に気づいた自分を肯定すること
ストレスが溜まった時(溜まりそうになった時)の、気分転換法やストレス解消法をあらかじめ身につけておくこと
サポートしてくれている人に自分の今の気持ちを正直に話すこと
運動リストなど、具体的な計画を見直す(立て直す)こと
運動不足解消のために始めること【第5ステージ:維持期】

「がんばる宣言」の振り返り
◆「はい」の人
- これまで行動を中断させるような誘惑がありましたか?
- どのように対処しましたか?
- 今後の目標を立てましょう!
◆「いいえ」の人(達成できなかった人)
- 何が原因で目標を達成できなかったと思いますか?
- その原因についてこれからどのように対処しようと思いますか?
- もう一度目標をたててみましょう!
気持ちの振り返り
◆停滞期について
◆旅行や飲み会のなどのイベントの時は
◆気がゆるんでしまったら
◆リバウンドしないために
◆話題の「○○ダイエット」をやってもいい?
運動療法で効果が出ない患者さん【継続は力なり!】

紆余曲折あった今までのことは決して無駄じゃない!
現在、運動はできていますか?
運動の回数はどうですか?
運動の量はどうですか?
食事には気を配っていますか?
食事の量はどうでしょうか?
食事の回数は?
食事の時間に気をつけていますか?
などなど・・・・・。
体の中や気持ちの変化を感じよう!
行動開始日からあなたの体や気持ちは確実に変化しようとしています。
今は効果を実感できなくても、あきらめずにコツコツ続けていれば「よっしゃー!やっててよかった」って思える日が必ず訪れます。
やめなければ大丈夫!
継続は力なりです!!
まとめ
「運動不足の患者さんに対して行動を促すためには何から始めるか?」や「運動療法ってホントに効果あるの?」と言ったお悩みや疑問を解決する方法として、【多理論統合モデル(TTM)】について詳しく解説してきました。
また、【多理論統合モデル(TTM)】より先に患者さんとの信頼関係の構築が重要であることもお伝えしました。
現役看護師で運動療法についてお悩みの方はもちろん、看護師復帰を視野に入れている潜在看護師さんにも本記事が届けば幸いです。
お忙しい中、ここまで読んでいただいた潜在看護師さんは多かれ少なかれ復職が頭のすみにあるんじゃないかと考えます。
次はこちらの記事がオススメです

