看護師を守る!
- ヘルシーワークプレイスの構成要素である「業務上の危険」にはどんな要因があるの?
- それぞれの業務上の危険についての対策方法を知りたい。そして実践したい!
こういった疑問や期待に応える記事です。
この記事を書いている僕は30才で看護師となり、4年目で潜在看護師という名のニートへ。そこから復職し、現在は認定看護師として看護に勤しんでいます。
この記事では、下記の【ヘルシーワークプレイス】7つの要因や予防・対策について、くわし〜〜く解説します。
【ヘルシーワークプレイス】7つの要因
- 生物学的要因
- 物理的要因
- 化学的要因
- 人間工学的要因
- 交通移動要因
- 勤務・労働時間要因
- 心理・社会的要因
では、まいりましょう 。
ヒエラルキーコントロールとは?
職業上の危険性への曝露を排除、または最小限にするためのリスクマネジメントの概念です。
米国のCDC(国際疾病予防管理センター)、NIOSH(国立労働安全衛生研究所)では、曝露に対する効果的な予防策についてヒエラルキーコントロールを紹介しています。


ヘルシーワークプレイス7つの要因|①生物学的要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。まずは【生物的要因】について解説します。
生物学的要因とは?
この生物学的要因の感染経路には、
- 血液媒介
- 空気感染
- 飛沫感染
- 接触感染
によるものがあります。
医療機関では特に、皮膚の傷口から感染するケースや、呼吸器・消化器系を媒介して感染するケースが多く発生しています。
医療従事者が特に留意すべき感染症としては、
- 新型コロナウイルス
- B 型肝炎(血液媒介)
- C 型肝炎(血液媒介)
- A 型肝炎(糞尿などの接触)
- 結核(空気感染)
などが世界的に共通してあげられますね。
また医療機関で蔓延する可能性の高いものに、
- 水痘
- 麻疹
- 流行性耳下腺炎
- 風疹
などがあります。
さらに、
- 多剤耐性結核(MDR-TB)
- メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
などの多剤耐性菌への接触も生物学的要因に含まれます。
では、 ICN(国際看護師協会)の所信声明「薬剤耐性(AMR)Antimicrobialresistance」(2017年改訂日本看護協会訳)
薬剤耐性について「世界のあらゆる地域で、バクテリア、寄生虫、ウイルス及び菌類はますます抗微生物薬に対して耐性を持つようになっている。その結果、抗微生物薬が効かなくなり、感染状態が続き、他の人々や集団への感染が拡大するリスクが高まる。」
(中略)
「耐性病原菌の蔓延は、人口増加、感受性人口の変化、都市化による人口過密、環境変化、戦争と社会混乱、不十分な感染症対策、衛生状態と衛生設備、食品産業の変化、及び拡大する世界貿易や旅行などによって促進される。」
と記しています。
生物学的要因への予防と対策がなぜ必要なのか?
【結論】
われわれ看護職は、看護実践において様々な生物学的要因と日常的に接触しているから
です。
例えば、
- 医療用針
- 汚染リネン
- 糞尿、吐物などの汚染物(廃棄を含む)
などですね。
なので、生物学的要因への予防と対策を理解し実践することが不可欠なんです。
標準予防対策(スタンダードプリコーション)は、汗を除くすべての血液・体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚・粘膜は伝播しうる感染性微生物を含んでいる可能性があるという原則に基づいて行われる標準的な予防策です。
標準予防策の主な内容は、
- 手指衛生(手洗い手指消毒)
- 個人防護具(手袋、マスク、ガウンなど)の使用
- 呼吸器衛生(咳エチケット)
です。
下記マニュアルも参考・活用してみてください。
医療機関における院内感染防止マニュアル作成のための手引き(案)[ 更新版](160201ver.6.02) 2016 年2 月更新版
- 各医療施設では、マニュアルや各種ガイドラインを十分に活用し、全ての職員が守れるルールを構築し、定期的に見直しを行うこと
- さらに、看護職1人ひとりがそれらを日常の看護活動で正しく実践すること
- 患者の安全を守ることと同様に、あなた自身の安全を守ること
- あなた自身が感染源となりうることを理解し適切な行動をとること
これらがとても重要になります。
生物学的要因への予防と対策・理解と実践
ヘルシーワークプレイスを構成する4つの要素のうち、医療者側に関係する『組織や人』の予防対策について。
組織
安全対策に積極的に取り組む費用(コスト)と、対応しないことで生じる費用(コスト)
を念頭に、各施設で最適な安全対策を講じましょう。
看護管理者
「組織との連携」と「個人への対応」(測定・評価・改善・モニタリング)を行いましょう。
例えば、
- 定期的な教育、感染発生時の訓練を実施する
- マニュアルの周知徹底と定期的な改善
などを行います。
個人(看護職1人ひとり)
前提として「組織の予防対策は必ず守る」こと
- 自分の健康状態を知り、適切な行動をとること
- 定期健康診断や必要時にワクチン接種を行うこと
無理をして勤務した結果、重大な感染拡大を招く恐れがあることを再認識しましょう。
ヘルシーワークプレイス7つの要因|②物理的要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。続いては【物理的要因】について解説します。
物理的要因とは?
職場(病院・クリニックなど)における物理的に危険な因子には、
- 電気、電子機器(ブルーライト)
- 熱、音、不適切な換気
- レーザ煙、電離性放射線、非電離性放射線
- 配線、コード類
などがあげられますね。
物理的要因への予防と対策がなぜ大切か?
医療従事者はこうした物理的な要因のもと業務を行っており、働く場所の労働環境によってその頻度が高い因子もあります。
また、訪問看護においても物理的要因への留意が必要です。
高齢者は温度に対する感覚が弱くなるため、真夏の暑い時期でも冷房を使用しない方が少なくありません。
患者の健康と安全を守ると同時に、あなた自身の物理的な労働環境が適切かも考慮することが重要となります。
看護業務での物理的因子の例
電気 | ・医療用機材(保温・加湿器など)や患者宅の私物(電気毛布、電気ストーブなど)の不適切な取扱いによる火傷や感電など
・火災など二次災害の恐れ |
---|---|
熱 | ・医療用機材の不適切な取扱いによる火傷など
・高温な労働環境になりやすい場所での長時間業務 ・〔 給湯室、浴室(入浴介助時)、古い建物(家屋)〕は熱中症、脱水症状などをもたらす ・低温は労働環境での長時間業務 |
音 | ・医療機材の警報音への曝露など
・高音域の音に長時間さらされることで、頭痛、苛立ち、集中力の低下、同僚との会話が困難になるなど、心身症状以外にも様々なリスクをもたらす |
換気 | ・不適切な換気下での業務による喉の痛み、鼻水、咳、頭痛などの身体症状 |
レーザー煙 | ・手術室で使用される電気メスなど
・皮膚組織などを照射・切除する際に、有害ガスや蒸気、空中細菌を発生させ、目や上気道の痛み、視覚障害をもたらす危険がある |
電離性放射線 | ・一般撮影(レントゲン)、CT検査、透視検査(消化器や血管の造営など)
・IVR(Interventional Radiology)、核医学検査(SPECT やPET)、放射線治療など |
非電離性放射線 | ・可視光線、赤外線、電波(テレビ、ラジオなど周波数が3 千ヘルツ以下の電磁波)、マイクロ波、紫外線の一部など |
光(ブルーライト含む) | ・長時間のパソコン、タブレットなどの電子通信機器使用業務
・網膜・角膜や眼精疲労など目への影響や、頭痛、皮膚の老化、睡眠障害などの影響をもたらす ・不適切な作業環境照度での業務 ・眼精疲労など目への影響や、頭痛、集中力の低下など |
物理的要因への予防と対策の理解と実践
マニュアルに盛込むべき項目の例
- 環境の整備(作業環境デザイン)
- 環境の定期的な点検
- 使用機材の保守・医療資材の明記
- 適切な隔離
- 適切な防具、遮断材の使用
- 事故発生時の報告フロー
- 評価と改善
継続的な教育やトレーニングの提供
チェックポイントの一例
【 熱 】 | ・温度の測定と定期的な換気、作業時間の調整 |
---|---|
【 音 】 | ・コミュニケーションや警報音を遮るほど騒音を放置していないか |
【 放射線 】 | ・防護の三原則(正当化・防護の最適化・線量限度の適用)を守りましょう |
【 光 】 | ・夜勤病室巡視など特別な状況を除いては、労働環境において適切な照度を提供する
・夜間のベットサイドケアでは適切な照度を使用する。 |
ヘルシーワークプレイス7つの要因|③化学的要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。続いては【化学的要因】について解説します。
化学的要因とは?
化学的要因とされる物質には、
- 消毒剤
- 滅菌剤
- 薬物
- 試験試薬
- 清掃薬剤
- 殺菌剤
などがありますね。
化学的要因への予防と対策がなぜ大切か?
医療施設では、数多くの化学物質が取扱われており、患者の治療に伴う化学物質の取扱いは避けることができません。このため、組織・施設において安全な取扱いや予防対策について学習し実践することが重要です。
化学的要因による危険を防ぐため、まず大切になるのが【危険を知ること】です。
また施設における化学物質取扱いのモニタリングには、
- 曝露の統計(発生動向の把握)
- 化学物質の拡散(こぼれ、漏れなど)の統計(発生動向の把握)
- 知覚症状(異臭、視神経症状など)の確認や追跡(トレーサビリティー)と調査
などがあげられます。
科学的要因への予防と対策・理解と実践
ヘルシーワークプレイスを構成する4つの要素のうち、医療者側に関係する『組織や人』の予防対策について。
組織
- 各種法律(労働安全衛生法、特定化学物質障害予防規則など)に準拠した作業環境管理
- 実態把握:取扱い化学物質のトレーサビリティの把握など
- 施設で働く医療従事者以外の方々(労働者)の安全対策の検討
看護管理者
- 教育:入職時の教育、定期的な教育・研修、感染発生時の訓練
- 実態把握:日々の点検の徹底など
- 曝露時の対応:曝露発生時および時間の経過に応じた対応など
個人
- 安全な取り扱いの徹底(安全キャビネット、保護具の適正な使用など)
- 曝露時の報告、化学物資の拡散が発生した場合は、直ちに上司に報告し、曝露により生じる症状や傷害と応急処置について対応(把握)し、経過観察(記録)する
ヘルシーワークプレイス7つの要因|④人間工学的要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。続いては【人間工学的要因】について解説します。
人間工学的要因とは?
人間工学的な危険とは、
患者の移動や処置などに伴う不安定な姿勢での作業動作
のことです。
人間工学的要因による心身のリスクとしては、筋骨格系障害とされる腰・首・肩・手首の痛みなどがあります。
また、近年の電子機器テクノロジーの急速な進展により、医療現場でも電子カルテやタブレット型機材などの使用頻度が増えていますよね。
電子機器(電子カルテ)に起因した
- 眼精疲労や肩こり
- 手根管症候群の痛みやしびれ
などの身体症状を有するケースも増えています。
さらに近年では腰痛に関する多くの研究や調査において、いわゆるストレス「心理・社会的要因」も一因であるとされています。
参考:垰田和史: 新「職場における腰痛予防対策指針」後の腰痛問題への取り組み, 医療労働, 563 (12), 3-10, 2013.
人間工学的要因への予防と対策がなぜ大切か?
職場における腰痛は多くの業種および作業において見られ、全国では「業務上の疾病」の約60%を占めています。
なかでも、保健衛生業で発生する「業務上の疾病」で腰痛が占める割合は全体の約80%におよびます。
しかし国の統計によると、
主要業種別の業務上腰痛件数(休業4 日以上)は社会福祉施設の介護職員などに比べ、医療保健業に従事する看護師は少ない
とされています。
これは看護師の場合、
と考える組織風土があ利、労災申請に結びつかないためではないかと考えられます。
腰痛のある看護職は離職意向にも有意に影響しているため、職場における腰痛予防はヘルシーワークプレイスの実現において重要な課題といえます。
参考:8)日本医療総合研究所: 看護問題プロジェクト報告「急性期一般病院における看護職員の腰痛・頸肩腕痛の実態 調査」, 月刊国民医療
人間工学的要因への予防と対策・理解と実践
♦作業姿勢・動作の要因(抱き上げ、不自然・不安定な姿勢など)
♦作業環境の要因(温湿度、照明、段差、作業空間など)
♦看護職の個人的要因(過度の肥満、筋力不足など)
♦補助用具の使用状況(補助用具の準備、効果的に使用されているかなど)
- 作業環境の整備(作業台の高さやスペースなど人間中心の設計)
- 作業の実施体制や作業標準の策定(休憩と作業の組み合わせなど)
- 補助用具の使用(スライディングシート、固定式リフト、パワーアシストスーツ
- などの活用)
- 予防ボディメカニクス(作業姿勢・動作の見直し)
- 健康管理・労働安全教育(腰痛予防体操の実施、筋力強化、リフレッシュなど)
さらに組織では、
- 腰痛予防研修や教育の実施
- 腰痛有訴者・有病者の把握と分析・対策
を立てます。
ヘルシーワークプレイス7つの要因|⑤交通移動要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。続いては【交通移動要因】について解説します。
交通移動要因とは?
具体的には、【通勤や業務のための交通移動に伴う危険】をさします。
交通移動に伴う危険の具体例としては、
- 通勤
- 利用者宅への訪問
- その他、業務上の必要があっての移動時
などによって、あなた自身が自動車・バイク・自転車を運転して事故を起こすことがあげられます。
交通事故は自分自身だけでなく、第三者をも巻き込み、危険にさらし、傷害を負わせます。
その場合、運転者は当然に法的・社会的な責任を問われます。
交通移動要因への予防と対策がなぜ大切か?
多くの看護師は交代制勤務をしており、不規則な勤務に合わせて通勤しています。
そのため移動の時間帯が早朝や深夜となり、これに伴って危険が増すことが考えられます。
また業務上、患者や対象住民の居宅を訪問する際は交通移動が必須です。
通常の訪問時はもちろん、夜間の訪問や緊急訪問時などは特に交通移動に危険が伴います。
運転者の危険の度合いを増す要素には、
- 環境(夜間、夕暮れ時、悪天候、積雪・凍結、悪路、不慣れな道、見通しの悪い場所、事故が起きやすい交差点など)
- 手段(自動車・自転車などの故障、整備不良、操作に不慣れ)
- 運転者のコンディション(時間切迫、焦り、深夜、夜勤明け、緊急呼び出し、睡眠不足、酒気帯び、薬物の服用、加齢に伴う反応の遅滞など)
などがあります。
みんなも知っているとおり、運転中のスマートフォンや携帯電話の使用は道路交通法で禁止されています。
運転者間のトラブルや、悪意のある運転者の危険行為によって、運転者が危険にさらされた事例も報道されています。
こいったトラブルを回避するよう心がけていたとしても、危険な状況に巻き込まれるかもしれません。
ですので、具体的な対応策について知っておくことが必要なんです。
交通移動要因への予防と対策・理解と実践
看護師にとって通勤や業務に伴う交通移動は避けられないものですよね。
しかも勤務形態や業務の性質上、危険の度合いを増す要素が伴いがちであることを十分認識する必要があります。
交通移動要因に関する対策は、組織的に取り組むのが得策です。
例えば、「職員の安全意識の醸成、安全行動の意識づけ」です。
基本的なことですが、
- 疲れや眠気がある場合は移動前に休息すること
- つねに時間には余裕を持って行動すること
などを看護師1人ひとりが習慣化できるよう、「組織として」働きかけます。
休息、仮眠ができる場所の確保
夜勤明けの帰宅途中の事故防止には、職場の側にも安全確保上の責任(職員に対する安全配慮義務)があります。
危険情報の共有と再発防止への取り組み
- 通勤や地域で訪問活動を実施する圏内の交通・道路事情や事故・インシデント情報をタイムリーに共有しましょう。
- 危険な目にあったときやヒヤリとしたとき、職場でその情報をインシデント事例として共有して注意喚起します。
- さらにインシデントや事故事例の報告については、その背景を含めて把握分析し再発防止を呼びかけましょう。
ヘルシーワークプレイス7つの要因|⑥勤務・労働時間要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。続いては【勤務・労働時間要因】について解説します。
勤務・労働時間要因とは?
勤務形態や労働時間の長さなどが、労働安全衛生上のリスクをもたらす要因となることがあります。
僕たちの日々の生活は、活動による疲労を適切な休息(睡眠)によって解消し、次の活動に備えるという疲労回復のサイクルのうえに成立っています。
例えば、休息が不十分であったためにその日の疲労が解消しきれず、翌日以降に持ち越された場合、解消されなかった疲労は蓄積しますよね。
こうして長期にわたって蓄積された疲労が、心身の活動性を低下させ、さらに健康にも悪影響を及ぼすことが知られてきました。
僕たち看護師は、24時間を通じて患者の安全を守りケアにあたるという業務の特性上、多くが夜勤を含む交代制勤務に従事しています。
また訪問看護ステーションでは、通常の営業時間外の夜間や休日に患者(利用者)・家族からの電話や緊急訪問要請に対応するため、業務用携帯電話を持って自宅待機する態勢がとられます。
看護師の勤務・労働時間に関して、
- 勤務間インターバル(勤務終了から次の勤務開始までの間隔)が確保されない
- 1 回の勤務(夜勤を含む)の拘束時間が長い
- 時間外勤務が常態化している、時間外勤務の総時間数が長い
- 夜勤の回数が多い
- 勤務(夜勤を含む)中に適切な休憩時間が設定されない、または、休憩が取れない
- 夜勤中に適切な仮眠時間が設定されない、または仮眠が取れない
- 当直中、あるいはオン・コールによる緊急呼び出しによる実働があった場合、十分な休息がないまま次の通常勤務につく
これらが労働安全衛生上のリスクをもたらす要因となるものとして、あげられます。
なお、交代制勤務は交代時刻で次の勤務シフトに業務を引き継ぐ仕組みでなので、本来勤務延長による時間外勤務は発生しないはずなんですよ。
交代制勤務者の時間外勤務は交代制勤務の負担をより重くし、相乗効果として労働安全衛生上のリスクを増大させます。
なので交代制勤務者の長時間労働の危険性については、1人ひとりの看護師が十分認識する必要があるかと考えます。
勤務・労働時間要因による業務上の危険への対処(予防と対策)がなぜ必要なのか?
時間外・休日労働は、職場の労使の協定(労働基準法第36 条に基づくものとして「36(さぶろく)協定」と呼ばれる)の締結によってはじめて可能になります。
時間外・休日労働が過重になっていないかどうかのチェック、また過重労働の解消に向けた取り組みは、職場の労使が協働して進める必要があります。
労働法制上の規制がないこれらのことがらについては、
- 実際には職場のルール(就業規則、労使協定など)
- 労働者と使用者との個別の労働契約
によって決められることになります。
勤務・労働時間要因への予防と対策・理解と実践
看護師の勤務体制と労働時間をめぐっては、過労につながる長時間労働を避けると同時に、労働に伴う疲労を十分に回復できる、【適切な休息の確保がポイント】です。
①夜勤・交代制勤務に関するガイドライン
日本看護協会は2013年に
「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」
を公表しました。
このガイドラインには、夜勤・交代制勤務の負担を軽減し、リスクを低減するための基本的な考え方と具体的な方策を提言しています。
項 目 基 準
1.勤務間隔 | 最低11時間以上の間隔をあける |
---|---|
2.勤務の拘束時間 | 拘束時間は13時間以内とする |
3.夜勤回数 | 3交代制勤務は月8回以内を基本とする。それ以外の勤務は労働時間に応じた回数とする |
4.夜勤の連続回数 | 最大2連続(2回)まで |
5.連続勤務日数 | 5日以内 |
6.休憩時間 | 夜勤時は1時間以上。日勤時は労働時間・労働負担に応じて適切な時間数を確保する |
7.夜勤時の仮眠時間 | 夜勤の途中で連続した仮眠時間を設定する |
8.夜勤後の休息(休日を含む) | 2回連続の夜勤後は概ね48時間以上の休息を確保する。1回の夜勤後は概ね24時間以上確保する |
9.週末の連続休日 | 少なくとも月1回は土曜・日曜ともに前後に夜勤のない休日をつくる |
10.交代の方向 | 正循環の交代周期とする |
11.早朝の始業時刻 | 早出の始業時刻は7時より前は避ける |
②夜勤専従勤務導入の留意点
ですがその勤務のすべてが夜勤であるため、夜勤のもたらすリスクや悪影響が大きくなることが懸念されます。
安易に導入するのではなく、負担軽減の方策を職場でルール化したうえで、あくまでも勤務者自身の選択のもとで夜勤専従勤務が行われるようにすることが大切です。
夜勤専従勤務ルールの例
- 夜勤専従勤務期間の所定労働時間を短縮する(月144 時間以内とするなど)
- 健康管理体制整備(導入前の健診、産業医の意見を聞くなど)
- 報酬(手当の支給などの経済的報酬、所定労働時間の短縮などの時間的な優遇など)
- 期限つきとする(期限前でも中止の申出ができる)
- 本人の選択による(夜勤に伴う心身の負担と軽減策、処遇などについて十分な説明を受け、納得した上で、労働者本人の希望によって勤務が選択されること)
- 夜勤遂行可能な能力・経験をもつこと
- 夜勤専従勤務者の負担が過重にならない夜勤メンバーの組み合せ
- 夜勤時間帯の業務整理
ヘルシーワークプレイス7つの要因|⑦心理・社会的要因

ヘルシーワークプレイス7つの要因。最後は【心理・社会的要因】について解説します。
心理・社会的要因とは?
心理・社会的要因】を、 職場における業務上の危険をもたらす【
- 患者・同僚及び第三者による暴力
- ハラスメント
- 精神的ストレス
以上、3つの角度から説明します。
患者(利用者)・同僚及び第三者による暴力
看護師への暴力行為は主として、
- 患者およびその家族や関係者
- 職場の同僚(看護職同士、または、医師をはじめとする多職種の同僚)
- それ以外の第三者
によって引き起こされています。
また、患者(利用者)の居宅を訪問して看護サービスが提供される場合には、患者(利用者)の居宅が暴力発生の場となることも・・・。
ほとんどの場合、看護職は単独であり事態は密室での出来事となるため対処が難しくなります。
身体的暴力
- 相手の身体への直接の物理的な攻撃をする
- 物品を投げつける
- たたく
- 壊す
など、攻撃や威嚇の意図を持って行われる物を介しての暴力行為をも含みます。
精神的暴力
- 言葉や態度による相手への攻撃
- 暴言
- 脅迫
- 侮辱
- 無視
などを指します。
性的暴力
- 相手の意向に反した性的接触
- レイプ
- 屈辱を与える行為
などを指します。
ハラスメント
一般にハラスメント(嫌がらせ)は、被害者の持つさまざまな特性を理由として引き起こされています。
具体的には、
- 性差
- 年齢
- 資格
- キャリア
- 婚姻
- 人種
- 宗教
- 性的志向
- LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)
これらの特性に対する差別的な意識がハラスメントを行う人の側にあると見られます。
- いじめは長期にわたって反復される残虐で悪意に満ちた行為によって被害者に屈辱を与え、気持ちを萎えさせてしまうことです。
- いじめはしばしば、ある特定の集団内(たとえば同じ部署の職員間、同期入職の職員間など)で特定の個人を対象に行われ、集団の外からは把握しにくいことがあります。
また近年では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上でのいじめが報告されており、防止対策が必要と考えられます。
身体的・精神的暴力に加え、 内容は
- 隔離や仲間外し
- 無視(人間関係からの切り離し)
- 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制(過大な要求)
- 仕事の妨害
- 明らかに能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
- 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
などがあげられます。
セクシャルハラスメントは、男女雇用機会均等法においては、 職場での
「職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること、および性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること」
をいいます。
その背景には、男女の性別役割意識があることもあります。
マタニティハラスメントは、 職場での
「妊娠・出産・育児休業・介護休業などを理由とする不利益取扱い」
で、職員が妊娠・出産したこと、育児との両立のための支援措置を利用しようとすること、あるいは利用していることに対して上司や同僚が嫌がらせを行うことを指します。
パタニティハラスメントと呼びます。 介護と仕事との両立についての同様の嫌がらせを
マタニティハラスメント・パタニティハラスメントは、
妊娠・出産・育児・介護を行う労働者の就業環境を害する行為として、それ自体が男女雇用機会均等法と育児・介護休業法により禁じられており、
雇用主には防止対策が2017 年1 月より義務付けられています。
精神的ストレス
ストレスとは、外部からの刺激によって私たちのこころや体に生じる緊張状態を指します。ここでは厚生労働省のこころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトを参考にして、精神的なストレス、つまり、こころに生じるストレスを取り上げます。
有益(プラス)な面」と「有害(マイナス)な面」とがあるといわれます。 ストレスには「
- 「プラス」の例は、課題を必ず達成しなくてはならないというストレスによって、やる気や集中力が高まり、持てる力が発揮できた状態です。
- 一方「マイナス」の例は、強いストレスに長期間さらされることで、心だけでなく身体面の不調が生じ、場合によっては深刻な状態になることです。
ストレスとうまくつきあうことは、様々な病気の予防になるだけでなく、充実した生き方にもつながります。