今回は【外傷アセスメント】についてです
【潜在看護師さん向け救急外来の看護】シリーズでは、父(よし)が救急外来で使っていたノートから抜粋・記事にしています。学べることや、日常に変換できるものもあると思います。ぜひ、お役立て下さい!
下記に書いてあることは、近所で起こりうるかもしれないことです。
とっさに外傷のある方を見ると、不安や焦りが込み上げてくるかもしれません。
外傷のある方への観察項目を、「超重要」なことだけ書きました。
ご近所で遭遇した場合は、【潜在看護師向け救急外来の看護】アセスメント&トリアージまとめの記事も参考に、救急隊に引き継いぐまでできるだけ冷静に対応してあげてくださいね。
外傷の情報収集は、『受傷機転』も超重要な項目です。
外傷患者の観察は
①必ず衣服を全部とること
②全身くまなく観察すること
が超重要です。
外傷対応では、つい大きな傷や出血、患者の唸り声などに目や意識を奪われがち。だが生命を危険にさらしている原因は、別にあることが多いことを知っておく。
受傷原因別に外傷を分類しました。
鈍的外傷 | 交通外傷 墜転落外傷 重量物の落下による外傷 下敷きによる外傷 動力機械による外傷(労働災害) スポーツ外傷 爆傷 雪崩 |
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鋭的外傷 | 刃物などの鋭利な物体によって生じる外傷 凶器による刺傷 銃創 その他 |
では、私が救急外来で学んだ【外傷看護】についてアセスメント記事にしましたので、スキマ時間にでもご覧ください(^^)v
【外傷アセスメント】患者搬入までの情報を考えまくろう

車外に放り出された
車にひかれた
5m以上跳ね飛ばされた
車の損傷が激しい
車の横転
運転手が飛ばされていたバイク事故
自動車と歩行者・自転車の衝突事故
機械器具に巻き込まれた
体幹部が挟まれた
高所墜落(6m以上)
「Load and Go」の概念
生命意地に関係のない部位の観察や処置を省略し、生命維持に必要な処置のみ行って、一刻も早く外傷処置が可能な医療機関(救命救急センター等)へ搬送するための判断と行為の全体的な概念参考:一般社団法人JPTEC協議会:JPTECガイドライン,P9,へるす出版,2010
①外傷患者:救急隊からの情報収集
- 受傷機転:外力の大きさ・車の破損状況・車体のスピードや転落の高さ
- 受傷部位:受傷部位の大きさ・深さ・出血の状況
- 車の場合:運転席・助手席・後部座席など、どこに乗っていたか?
- バイクの場合:ヘルメットを装着していたか?
- 既往歴
- バイタルサイン
- 現場で行われた処置
情報収集しながら外傷の状況や受傷機転などを常に考えるクセをつけましょう
②外傷患者:救急隊からの情報収集およびアセスメント
また救急隊からの情報も、患者情報だけでなく受傷機転や受傷時の状況など、多くのヒントを得ることができます。
重傷外傷では、事象から決定的治療(手術や止血術など)を開始するまでの1時間が非常に重要となります。
ゴールデンアワーのことを考えると、救急隊による現場活動は生命維持に関係のない事は省略し、搬送にかかる時間を短縮することが目標とされています。
救急隊は、現場の状況と身体所見から「Load and Go」であるか否かを判断して、搬送連絡をしてきます。
③外傷患者:救急外来の準備
病院到着までの間に、状態が急激に変化している可能性も考えられます。
特に外傷では、実質臓器や血管損傷による出血性ショックなど、緊急性の高い場合があります。
- 感染防御(感染防護具)
- 救急カート
- 除細動
- モニター類
- 酸素
- 輸液(加温輸液)
- エコー
などの準備が必要となります。
【外傷アセスメント】患者収容しながら、ファーストチェック

【ここ集中!!!】
外傷による死亡には、3度のピークがある。
ピークⅠ(数秒〜数分) | 大血管損傷(大動脈など)、心破裂、脳幹部損傷、高位頸椎損傷 |
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ピークⅡ(数分〜数時間) | 肝・脾破裂、骨盤損傷、急性硬膜下血腫、急性硬膜外血腫、外傷性血気胸、新タンポナーデ |
ピークⅢ(数日〜数週間) | 脳圧更新、敗血症、多臓器不全 |
心停止状態で搬送されたのか、または搬入後急速に死亡したとしたら・・・。
どういう状態で搬送されてくるのか、このピークを参考に予測します。
①外傷患者:病院到着時のアセスメント
心停止・ショックの5兆候・呼吸障害・外出血の有無をすばやくチェック。
また初療ベッドへ移動させるとともに、ただちに酸素投与・モニタリングを実施します。
【ショック5兆候(5P’s)】
- Pallor(蒼白)
- Pulselessness(脈拍触知不可)
- Prostration(虚脱)
- Pulmonary dificiency(呼吸不全)
- Perspiretion(冷汗)
①A:Airway&Cervical spine immobilization【気道確保と頸椎保護】 | 会話・発生ができるか?
気道閉塞の有無 頸椎カラーの装着→すでに救急隊により装着されていることが多い。頸椎損傷が否定されるまで、装着を続けます。 |
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②B:Breathing | 胸部、頸部の視診・聴診・打診・触診 |
③C:Circulation | 外傷性ショックの90%は出血性ショック【表】
出血源の検索→FAST[※] |
④D:Dysfunction of CNS【切迫するD】 | GCS≦8の意識レベル、急激な意識レベル低下、脳ヘルニア兆候(瞳孔不同、クッシング兆候) |
⑤E:Exposure and Environmental control | 全身の衣服を取り、全身の外相を確認する。低体温の予防に努める。 |
腹部外傷患者の場合には、患者到着と同時に医師により【迅速超音波検査(FAST)】が行われます。
【表】ショックの重症度判断(出血量と臨床症状)
循環血液量欠乏量 | 出血量(ml) | ショック指数 | 時間尿量(ml/時) | 臨床症状 | |
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無症状 | 10〜15% | 500〜750 | 0.5〜1.0 | 40〜50 | 無症状
めまい |
軽度 | 15〜30% | 750〜1,500 | 1.0〜1.5 | 30〜40 | 冷感・冷汗
倦怠・口渇 |
中等度 | 30〜45% | 1,500〜2,250 | 1.5〜2.0 | 10〜20 | 頻脈(100~120回/分以上)
血圧(80~100mmHg) 蒼白・呼吸促迫 不穏・脈拍狭少 |
重症 | 45%以上 | 2,250以上 | 2.0以上 | 0〜10 | 頻脈(120回/分以上)
血圧(60mmHg以下) 強度の蒼白・チアノーゼ 意識混濁・昏睡 |
スクロールできます。
また、腹部外傷患者の場合には、患者到着と同時に、医師により迅速超音波検査(FAST)が行われる。
FASTは、腹腔内の液体貯留および、その量の評価を目的としています。([※]FAST【迅速超音波検査】)
②外傷患者:問診する
外傷患者は精神的動揺が激しいため、事故の状況や痛みの部位を的確にうったられない場合が多くあります。
【外傷アセスメント】全身のフィジカルアセスメント

(1)全身の観察・アセスメント
【表】視診での観察
- 皮膚の色(色素沈着)
- 線条:表皮網状層の弾性繊維を崩壊させるような急激な過進展による
- 瘢痕
- 静脈走行網
- 臍:位置・輪郭・表面の性状
- 身体部位の対称性
- 輪郭:平坦・陥没・膨隆
- 腹部膨満(主な原因:液体・ガス・脂肪・便繊維腫・胎児)
- 表面の動き:呼吸性運動・蠕動運動の可視・拍動
生命の危機が回避できたら、頭の先から足先まで全身を観察します。表側だけでなく、背面の観察も必ず行います。【表】
背面観察の際の体位変換は、頸椎損傷が否定されていなければ「Log-roll(ログロール)法」を行います。
「Log-roll(ログロール)法」とは、身体を1本の丸太(Log)に見立て、脊柱軸が捻れないように保持しながら行う体位変換のことです。
頭部保持者は、患者の鼻・顎先・臍のラインが一直線になるように保持することが重要です。脊椎安静を考えると、頻繁な体位変換は避けたい。
したがって1回のログロール時に、確実に背面観察を行います。
歩行者の外傷
歩行者の外傷は、一次損傷・二次損傷・三次損傷に分けることができます。
- 一次損傷:車のバンパーによる下肢損傷など、車両との衝突時に最初の損傷が生じる
- 二次損傷:続いて車にすくい上げられ、ボンネットやフロントガラスに衝突し、上肢・骨盤・脊椎の骨折や、頭部・胸腹部の損傷を生じる
- 三次損傷:最後に地面に打ちつけられ、頭・頸部や脊椎などの損傷を引き起こす
胸部外傷
【表】胸部・腹部外傷時の身体所見
身体所見 | 考えられる状態 | |
視診 |
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触診 |
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聴診 |
|
|
打診 |
|
|
胸部には、心臓や大血管など、重要臓器があります。したがって、胸部外傷は、他の外傷に比べて緊急度の高いものが多いです。
搬入時の死亡例のほとんどは、心臓・大血管の破裂による大出血が原因です。
急性期の死亡では
- 心タンポナーデ
- 緊張性気胸・誤嚥
- 開放性気胸
などが原因と考えられます。
その他、身体所見より損傷部位や状態を予測することができます。【表】
腹部外傷
【ここに着目しよう!!】
腹部外傷の患者対応において重要なポイントは2つです!!
① | 腹壁のより、損傷部位を目視することができない |
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② | 臓器の損傷は1カ所ではなく、多くの臓器の損傷の可能性あり |
腹部外傷では、鈍的外傷が大半を占めます。
創や外出血を伴わないことが多いので、体表からの観察のみでは重症度を過小評価する危険性があるため、より注意が必要です。
<腹部外傷部位の観察>
- 体表面の打撲痕や擦過傷の有無と大きさを測定
- 腹部膨満がある場合は腹囲測定を行い、さらに経時的に観察
- 外出血のある場合には、圧迫・結紮・鉗子を用いいての止血
その他の外傷
【表a】骨折部位における推定出血量
肋骨骨折(1本) | 100〜200ml | 一側大腿骨開放性骨折 | 1,000〜2,000ml |
上腕骨骨折 | 200〜300ml | 両大腿骨閉鎖性骨折 | 2,000〜3,000ml |
頸骨閉鎖性骨折 | 300〜500ml | 両大腿骨開放性骨折 | 3,000〜4,500ml |
頸骨開放性骨折 | 500〜1,000ml | 骨盤骨折(尿路損傷なし) | 1,000〜1,500ml |
一側大腿骨閉鎖性骨折 | 500〜1,000ml | 骨盤骨折(尿路損傷あり) | 2,000〜4,000ml |
【表b】緊急処置が必要な四肢外傷
- 開放性骨折
- 転位の大きい骨折
- 神経血管損傷の合併
- コンパートメント症候群の合併
(脛骨の骨折、打撲、筋断裂など急性外傷がきっかけとなり組織内圧の上昇により、しびれ・うずき・強痛が起こる)
- デグロービング損傷
(回転機会などで、手袋を脱いだように皮膚が剥離する損傷)
その他の外傷の中で、生命危機を及ぼすものは【骨盤骨折】です。
骨盤外傷においては、迅速な判断・適切な止血処置、また対応ができない施設では、早急に対応可能な施設への転送が重要となります。
また、四肢の外傷はほとんどの患者に合併しているといってよいほど、頻度が高い外傷です。
身体所見では、
- 激しい疼痛や変形など表面に見えること、
- 時には出血を伴うこと
で、非常に目につきやすいことが特徴です。
四肢の外傷だからといって軽視せず、緊急性が高いものがあることを理解しておくことが重要です。【表b】
さらに、
骨折部位や数によっては、生命の危機的状況に陥ります。
それぞれの骨折部位により出血量を予測することができるので【表a】、出血性ショックの予防・早期発見がとても大切です。
まとめ:外傷アセスメント【情報と予測】
【外傷アセスメント】において大切なことは、
- 情報から予測される患者の状態
- 予測される緊急度の高い疾患
を素早く的確に考えることができるようになることだと思っています。
参考文献
1)一般社団法人JPTEC協議会:JPTECガイドブック
2)寺師縈,中谷茂子監修:救急看護アセスメントマップ
3)中村恵子:救急看護QUESTIONBOX2
など